11/3(火・祝)FPPアワード2020グランプリ受賞作品上映『へんしんっ!』の上映後、Q&Aが行われ、石田智哉監督が登場しました。
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荒木啓子さん(以下、司会):今皆さんにご覧いただきました『へんしんっ!』は「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」のグランプリ作品なのですが、その「ぴあフィルムフェスティバル」の映画祭のディレクターをやっている荒木と申します。せっかく東京国際映画祭での上映ですので、全然違う人に監督の紹介やいろいろな質問、進行をやっていただけるといいなぁと思っていたのですが、もう既に何度もお会いしている私が進行することになりまして、これから皆さんお待ちかねの石田監督をお迎えいたします。監督どうぞ。
石田智哉監督(以下、監督):『へんしんっ!』の監督を務めました、石田智哉といいます。本日はご来場いただき、ご鑑賞いただきありがとうございます。
司会:石田監督がほんとにできるだけ多くの人とお話ししたいという熱意が高いので、もう皆さんの質問をどんどん取れたらいいなと思っておりまして、これをもっと聞きたかったとか、もうちょっとここのことを詳しく知りたかったとかいう方、どんどん手を挙げていただいて、質問という形にしたのですけどいかがですか。
そういえば毎回私拝見して、最後のあのシーンがほんとに夢のようなシーンだなと思って、感動するんですけれども。あのシーンを見るために何度でも皆さん、観た方がいいと思うので、多くの人が観た方がいいと思うので、これが劇場公開になればいいなと私たちはすごく思っていますのでぜひ口コミをお願いします。
Q:素晴らしい作品をどうもありがとうございました。最初に石田監督がダンスを踊られるシーンで非常にこう、素晴らしいなぁと思ったんですけれども。あの時車椅子から降りて、ああいう形で体を動かされるということをなさった時に、どんなお気持ちだったのか。映画の中でもちょっとお話しされていましたけれど、そこをもうちょっと伺いたいなと思いました。
監督:ありがとうございます。最初にその、車椅子から降りる時にやっぱり、一番はじめに思ったのはやっぱ単純に怖いなっていうのは第一に感じたことで。それはやっぱり床っていう振動が響いたりとか、あとはわりと硬いところに降りるっていうことが一つと、もう一つは今まで降ろすっていうことを経験してない人、初めて降ろすっていうことをやってもらう人に降ろしてもらうっていうことへの純粋な怖さがまだありました。それもあって多分、その場面が一番、言葉をバーっと喋っているなというのを自分自身、観た後に思って。あれこれそれって、すごい指示語を出しまくっているところは多分その怖さもあるのかなっていう風に。振り返って編集などをしている中で思いました。
Q:ありがとうございます。その怖さっていうものがあって、その踊りに入ってきた時に、表情を拝見してると、どんどん変わっていくような気がしたんですけど、そのへんはいかがですか。
監督:そうですね。床に降りるところでいうと、降りて、砂連尾(理)さんが入ってきた瞬間のあたりからダンスが始まったというか。体を動かすことの、砂連尾さんが支えてくれることによって動きが出てきたりとかしたので、そのへんから怖さがちょっと薄れてきて、ちょっと楽しさとか喜びみたいなのを感じ始めたのかなと思います。
司会:この作品実は監督100時間以上の映像を撮った上で編集なさったんですよね。
監督:そうですね。この間質問された時に何時間撮ってたんだろうって数えて。正確に数えきれてないんですけどざっくり見ただけでも、カメラとか2台で回していたりしていたのでそれぐらいになっています。
司会:そこで初めて自分の姿を見て、じっくり自分も知り、他人も知ったという。映画の魔力の一つだと思いますが。
Q:途中で砂連尾さんの方からバレエをやっている人と石田監督の体のことについてお話があった時に、どちらも面白い身体という風におっしゃっていたんですが、面白い身体という風に言われることに対しては、石田監督は素直にどんな気持ちになるのかなっていうのが気になったのでお聞きしたいです。
監督:ありがとうございます。面白い。面白いっていうのは、僕自身はそんなに嫌だなと思うことはなくて。他の人に言われたらどう思うのかっていうのは正直言われてみないと分かんないなとは思うんですけど、砂連尾さんに言われた時は目の力とか、不自然なことのやりとりとか、本当に楽しんでいる人なんだろうなっていう。あとは映像、挿入されているやつの方を事前に観た時に、この人はすごい会話の、一人一人の体のことを見てそこから面白さを引き出していく人なんだなという風に思っていたので。砂連尾さんに関してはそんなに抵抗はなかったです。抵抗はなかったので、他の人に言われても抵抗は覚えないだろうっていう気がしています。
司会:ダンスの時のことはね、私たちの映画祭の時もいろいろ質問が来たんですけど。車椅子の解体のシーンのこととかも私たちの映画祭の時には聞いていたのですけど、そのお答えもとても面白かったので、後ほどお話ししていただければと思います。
Q:素晴らしい作品をありがとうございます。私は中国からの留学生ですけど、自分の日本語で意味がちゃんと伝わるかどうか分からない。日本は、立教大学はそんな専門があるということにびっくりしました。すごく面白い専門ですね。どうして当時、石田さんはその専門に入りたいと思いましたか。障害者にとって映像はどんな、撮られるというのはどんな気持ちですか。
監督:二つほどかな、二つ。まず映像身体学科っていうところに入ったきっかけというか。もともとボランティアしてもらっていた人が映像身体科の学生で、それで知って、名前を知って、もともと心理学とかも興味があったので、その隣にある学科で面白そうだなと思って。あとは単純に映像制作だけをやる場所っていうよりは、その学科は哲学だったりそれこそ今回やったダンスの先生がいたり、映画を批評する人もいたりっていういろんな人がいる場所だったので、いろんなものをつまみ食いしていくように、いろんなものに触れたいなと思ってそこを選びました。で、何でしたっけ二つ目。
Q:障害者に関するドキュメンタリーですけど、障害者にとって撮られるというのはどんな気持ちですか。
監督:僕はこれまで撮られることはあまりしてなくて、撮るところから入ったので、どういう気持ちなのかなっていうのはわからないんですけど、どうなんですかね(笑)。
司会:でも石田さん、途中で撮られる、自分も被写体に入ることを決断した瞬間があるんですよね。
監督:あります。監督としてやっぱり自分も入ったほうが、作品が広がっていくっていうことをいろんな人に言われたから被写体として入るようになったっていうのが結構大きい気がしていて。元々一方的に撮られ続けるっていうことはどういう感覚なのかはもしかしたらわからないかもしれないです。撮る側に回りたくなっちゃうのかもしれない(笑)。
Q:ありがとうございます。
美月めぐみ(以下、美月さん):私答えようか?
監督:あ、美月さん。
司会:ご出演くださってらっしゃる皆さんがお越しですね。石田さん、あの皆さんにご紹介をいただけますか。
監督:出演をしていただいた“バリアフリー演劇結社ばっかりばっかり”の女優をやられている美月めぐみさんです。
美月さん:はい、美月めぐみといいます。視覚障害全盲です。私は自分自身が舞台に立っているぐらいですから、見られることっていうのにそんなに抵抗ないです。小さい時にはやっぱり、嫌な思いはいろいろありましたけれども。今は映像を撮られることも含めて、視覚障害という立場、どんな風なものなのかっていうことを知っていただく機会が増えるっていうこともありますので、私の中にほとんど抵抗感みたいなものはありません。こんな感じでよろしいでしょうか。
司会:それは割と、人によって、状況によって大きく違ってくるっていうことでもありますかね?
美月さん:そうですね。たぶんそうだと思います。その障害を、障がい者になった時期とか、それをどういう風に自分の中に消化しているかとか、そういう条件で人によってものすごく違うと思います。石田君とか私はもう小さい時からなので、そのあたりは割と抵抗感は少ない方なんじゃないのかなと思います。
司会:せっかくマイクをお持ちですので、この映画に出演なさった時の忘れがたい何か思い出みたいなものがあったら、ご紹介いただけますか。
美月さん:お芝居の稽古から本番まで密着していただいて、色々撮っていただいたんですけれども、これもやっぱり私のやっていることとか考えていることとか、色々伝えられる機会になってとっても嬉しいなと思っていました。ただ、最後のダンスのシーンなんですけど、それこそダンスってやっぱり目で見るアートだと思うので、そこに私が入っていくってどういうことかなと思っていて、ずっと半信半疑だったんです。でも、実際に身体を動かして、みんなと一緒に動いたりしていて、それがすごい楽しいなと思ってきた時に、持ち上げられるわ、たかられるわ、みたいな状況になった時に、ああ私自分の気持ち表現するとこうなるよっていうのもありつつ、わっはっはっはって、声でね表現して笑っちゃったんですけど、それが私なんだろうなっていう風に思っていて。その最後のところのシーンが一番印象に残っています。
司会:あのシーンは本当に素晴らしかったです。石田さんに、さっきちょっと私がイントロで言ってしまいましたが、椅子の解体、車椅子の解体のシーンが非常にあの、私達の映画祭の審査員を感動させて、あれは商業映画では、きっと省いてしまうようなシーンで、それをきっちりと映しているというだけでも、もうなんかときめきが止まらないと。『星の子』の大森 (立嗣)監督が、熱く語ったのを覚えているんですけど、そのシーンについて石田監督がお話してくださったのが面白かったので、またここでもお話いただければと思います。あのみんなが恐る恐るやっている時の。
監督:恐る恐るやっているところ。何か具体的にそんなに。あのシーン、最初僕も入れるかどうか迷っていたところが実はあって。最初切っちゃったんですけど、やっぱり色々人からの意見をもらって戻したのですが。この電動車椅子を解体していくってやっぱり、僕にとってはこの電動車椅子がすごい自分オリジナルのもので、他の人は持っていないパーツってやっぱりありますし。あとは、何を言いましたっけ?
司会:ダンスの公演の間にみんながどんどん、どんどん慣れていく。それを見ていると、最初のみんなが恐る恐るやっている時が、プラモデルを組み立ててるみたいな。
監督:言っていましたね。パーツをはめて、テーブルを、電動のレバーを外して机に変えててみたいな。確かに、プラモデルみたいだね、って僕も確かに、言われるまでそんなに思っていなかったので。でもこの車椅子に関しては、割と自分の身体に合わせて作る、最後の車椅子、最後というかまあ、この背までにこの車椅子を作っていう、割と身体もそこで成長が止まるじゃないですけど、ある程度安定するよねっていうので作った車椅子だったので、すごい設計段階から、ちょっと色々と要望を出したりしていたのでというのはあります。
司会:オーダーメイドなんですね、完全に。
監督:オーダーメイド。
Q:お芝居の演出をしている人が「白い杖、視覚障害の白杖は眼球の代わりなんだから、眼球掴んでるのと一緒だよ」って言って、それからしばらく経ってからラストのシーンを撮った時に、砂連尾さんが普通に白杖を持ってまして。それがネットのレビューで「あれは絶対確信犯だ。監督の確信犯に違いない」っていうのがあったんですが、あれは確信犯ですか?
監督:僕ですか?砂連尾さんに聞いてみますか?
司会:砂連尾さんお越しなんでしょうか?
監督:僕がその場面を知ったのは、たぶん割と編集段階の気がしていて、遠巻きに見ていたので、何をやっているんだろうなと思って、ずっと不思議だったのと、あの時すごいあれ僕は監督ですよね?監督ってこれ見てていいのかな?出るべきなのか出ない方が良いのかっていうのがちょっとあったりして。まあ結局は出たんですけど。
砂連尾 理さん(以下、砂連尾さん):砂連尾と言います。初めまして。まず石田さんおめでとうございます。杖のことは本当に、全編を通して、触っちゃいけないんだって感じで。知ったというか。あの時は確信犯でも多分なんでもなくて、たぶんそこに直接触れるより、物を介して美月さんに触れる方が、何か美月さんの中に届くような気がしたんだと思います。それはたぶん、手だと直接触るっていうことは出来ると思うんですけど、杖を通した時に、何かその手の先にある、触る先にある、触れるような感覚。それって非常に繊細に触れるとしたら、直接ダイレクトに触るよりは、杖を通して触る方がたぶん、あの美月さんに触れられるだろうなあっていうのを、その時何かこう、感じたんだと思います。
司会:ということは、砂連尾さんは今日初めて全編をご覧になったのですか?
砂連尾さん:いえ、一度春ぐらいに、全編を通して石田さんから送っていただいて、パソコン上では見ていたんですけど、その時はそこ、あのまだ触っちゃいけないっていうところ、パソコンだとあんまり分かんなかったんですね。今日観ていて初めて知ったっていうか。
司会:私達の映画祭(ぴあフィルムフェスティバル)で最初に上映させていただいた時に、お客様の一人で、すごく若い女性が、覚えてらっしゃいます? 石田さん? 涙ぐみながら本当に最後、白い杖が魔法の杖のように、優しく触ることで何か全然別の物に見えてきた、みたいな、奇跡的なシーンだっていう感想を言ってくださった方、いらっしゃいましたよね。意外に覚えていない?
監督:どっちかっていうとなんかその表現が、結構、何か、すごいものを見てしまったっていう言葉の方が僕はすごい印象に残っていて。そうですよね、何か、後々考えて、僕で言う車椅子の操縦レバーが勝手に動いてわぁーみたいな、そういう感覚に近いのかなとか思ったりしたんですけど。
司会:今日は皆さんご来場ありがとうございました。ぜひ、この作品の公開に向けて、皆さんの口コミが広がると大変嬉しいと思っています。今日はご来場ありがとうございました。