11/2(月)TOKYOプレミア2020部門『鈴木さん』上映後、佐々木想監督をお迎えし、Q&Aが行われました。
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司会:では、お呼びいたしましょう。佐々木 想監督です!本日は『鈴木さん』のワールドプレミアです。一般のお客様に見て頂くのは今日が本当に初めてということで、一緒にご覧になっていかがだったか感想を伺ってもよろしいでしょうか。
佐々木 想監督(以下:監督):非常に久しぶりに観まして、嬉しいです。ヘンテコな作品だなと改めて思いましたけれども。
司会:「早く見つけよう敵と虫歯」すごく面白かったですけれども、この映画を作ろうと思ったきっかけからまず伺わせてください。
監督:一つには、昔ながらの、よそ者があるコミュニティにやってきて、それで去っていくという話なんですけれども、通常そこでやってくるのは腕利きのガンマンであったり剣の達人であったりするところを、私自身の実感からすると一種無力な人間がやってきて、なにも解決できぬまま去っていくとどうなるのかということでこの作品を発想しました。
司会:映画を撮るにあたってキャスティングもとても重要だったと思うんですけれども、まず主人公をいとうさんにお願いしたいと思った理由を教えてください。
監督:ブラウン管越しにと言いますか、テレビで拝見しただけなのですけれども、とても誠実で素敵な方なんじゃないかというふうに思いまして、お願いしてみました。
司会:いとうさんも舞台挨拶で、本当に笑っていない映画だと、そして役作りはする必要が無かったと仰っていましたよね。自分の中にある闇をそのまま表現できたのではないかと仰っていましたけれども、監督はいとうさんに何かこういうふうに演じてほしいということを仰ったのでしょうか。
監督:それについてはほとんど何も申していないです。こうしていただきたいということはそんなにお伝えしていないかと思います。
司会:そして神様役の佃さん(佃 典彦さん)。神様役も本当にどなたに頼むか悩んだのではないかと思うのですが、なぜ佃さんだったのかを教えてください。
監督:佃さんはまさに演劇の大先輩といいますか、大活躍をしていらっしゃる方なんですけれども、執筆時ですとか、舞台に立っていらっしゃる時以上に、例えばこういった挨拶の場に出てきていただいて、お見せになる佇まいがとても素敵だなと思いまして。それでお願いしました。
司会:エンディングの後、日本がどうなっていくのか、美しい国がどうなっていくのか気になりますが、監督は何かイメージはあるのでしょうか。
監督:日本ではないですね。日本ではないという所は非常に重要なところです(笑)。それはまさに観ていただいた方に想像していただければというところなんですれども、ポジションとしては地球最後の日のようなつもりで創ったような気がします。
Q:鈴木さんが誰かというのをずっと想像して観ていて非常に面白かったです。質問ですが、敢えて主人公のヨシコさんが、鈴木さんが誰なのかというのを詮索しなかったという意図があったら教えてほしいです。
監督:ありがとうございます。ヨシコが詮索しなかったということですよね。それは人間的な事情なんじゃないかと思うんですけれども、そんな答えで大丈夫なんでしょうか。すみません。
司会:人間的事情、そこがヨシコと鈴木さんが自然と距離か近くなっていった理由なんでしょうね。そこがお互いに人間をちゃんと見ていた、お互いにとしての魅力なんじゃないかと。
監督:『のび太と恐竜』じゃないですけれども、ドラえもんの。出会ったものを大切にするという単純に、特に隔離されたような環境であったりしたらそういうことも十分に起こり得るんじゃないかなというふうに思っています。
Q:神様のビジュアルについて
監督:ご質問誠にありがとうございます。確かに変ですよね、明らかに変なんですけれども、何であんなふうになったのかというと今、非常に考えているんですけれども、一つにはこれはフィクションであるといいますか、確かに今、自分たちが抱えている問題みたいなものを切実に盛り込んじゃっているものですから、なるべくフィクションにしたいという思いがあったのではないかというふうに思います。プリクラのような、プリクラで最近目を巨大化したり、そっちでいこうと思ったんですけれども、描いて下さる方にお願いしているうちにご覧いただいた形に収まったというような実情です。
Q:一番のこだわりのシーンがあったら教えてください
監督:観てくださり本当にありがとうございました。また、ご質問いただきありがとうございます。こだわりっていうとあれなんですけれども、ヨシコと鈴木さんが二人で草を片付けるところ、私自身が以前同じようなことをされたことがありまして、それでちょっとこれはやっておきたいなと思ったら、ああやって草を実体験以上に大盛りにしていただいて、ああいうシーンになりました。こだわりというか、感慨としては深く思っております。
司会:何故草取りを目の前でされてしまったんでしょうか。
監督:草がボーボーになってて、近所の手前、恥ずかしいっていうことだったみたいですかね。
司会:奥に監督の家があったんですか?
監督:いや、私が車を停めていた駐車場がありまして、その車の前のところに割と草が積み上げられていたことがありまして。
司会:はい。その経験が映画に活きたんですね。
監督:活きたかどうかはちょっと分かりませんが(笑)。そのまま使わせていただいたと言いますか、はい。
Q:監督の中で、この作品の中に込めたかった一番のゆがみは
監督:ご質問誠にありがとうございます。ゆがみの中でっていうことですよね。ひとつに思っておりますのは、集団と個人と言いますか、共同体と個人と言いますか。生物は結構、集団のために個人が奉仕するっていうのがどこか当たり前のところがあるかと思いますけれども、「本当か?」というようなところですね、それに犠牲を強いられる個人というものは、ひとつ挙げていただいたゆがみの中では、ひとつ大きな、僕自身がちょっと集団が苦手だというのがあってっていうのがあるんですけれども、それでやらせていただいたような形です。
司会:はい。先程お伺いしたら5年前くらいに脚本を書きはじめて、撮影が2年前ということですよね。「万歳!神様」ってシーンにすごく鳥肌が立ちました。ああいう自分たちが信じているものって本当なのかなって。嘘だと思っちゃってるじゃないですか。白塗りの神様を、神様じゃないと思っちゃっている。そういう、ゆがんだところが私たちにないのかなってすごく考えさせられました。
監督:常に、大概ゆがんでいるんじゃないかと思います。大概ゆがんでいるというか、至る所、あらゆる所でゆがんでるんだと思うんですけどれも。普段はなかなか目につかなかったり、僕自身も見て見ぬふりをしていたりですね、そうしてると思うんですけど。今年そういう風に、例えばちょっとそれが目につきやすい状況とかっていうのがあったのかもしれないですよね。この映画の『鈴木さん』の状況も、登場人物たちはほぼ、ここでゆがみが起きてるっていうことを知り得ないんだけれども、それを覗き見てる者にはそれが見えるっていうような話になってるのかなっていうのは、今お話いただいて思いました。
Q:5年前の脚本ということで世の中も色々変わっていってると思うんですけども、その中で監督が一番「ここはなんかちょっと違うな」とか、「大変だな、こういうの撮るのは」とかはありませんでしたか?
監督:ご質問誠にありがとうございます。世の中的なことは、色々変わったり、日に日に悪くなってるっていう部分もたくさんあったとは思うんですけれども、それとは無関係に私自身がお金はあまり集められないということが、作品を作るうえでの一番の障害ですと、そういうことに…(笑)
司会:監督の次回作の構想は?ヘンテコですか?
監督:ヘンテコかどうかは…ある程度ヘンテコなんではないかと思っています。国境の島を指相撲で取り合うって言う…。
司会:面白そうですね(笑)
監督:そう言っていただけると有難いんですけど、果たしてって言う気もしています…(笑)