2020.11.06 [イベントレポート]
絵画を用いた『ざくろ屋敷』、リモート製作の『move 2020』バラエティ豊かな深田晃司監督の短編群の裏話
fukada
登壇した深田晃司監督ら

第33回東京国際映画祭の特集「Japan Now 気鋭の表現者 深田晃司」で、『短編プログラム』が11月6日に上映され、深田監督のほか画家の深澤研、女優のひらたよーこ、兵藤公美がQ&Aに参加した。

この日は『ざくろ屋敷 バルザック「人間喜劇」より』(06)、『いなべ』(13)、『鳥(仮)』(16)、『ヤルタ会談 オンライン』(20)、『move 2020』(20)が上映された。

フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの短編小説が原作の『ざくろ屋敷』について、「深澤くんは中学の同級生、美術部で僕より絵がうまかったので25歳の時に一緒に作ってもらいました。東映アニメーションの静止画でアート作品を作るという企画に通ったものです。静止画を用いた映画といえば、クリス・マルケルの『ラ・ジュテ』や大島渚の『忍者武芸帳』があります。しかしああいうカット割りをやると700枚くらい絵を描かなければならないのですが、別の方法で絵だけで表現できるとわかり、深澤君に声を掛けました」と紹介。

深澤は「平安時代の絵巻物やロシアのイコンなどの考えを用いれば、絵画ならではの表現ができると思いました。場所だけでなく、時間も大きく変わる表現ができた」と同作の撮影手法について補足。油彩ではなく、テンペラ画で製作したと説明し、「バルザックはドラクロワと交流があって、絵画について詳しかった。バルザックが絵画について描いた短編「知られざる傑作」を読んで臨めば作品に厚みが出ると思いました」と述懐する。タッチについては「ドラクロワから印象派の人たちが影響を受け、色彩豊かになっていったという歴史があります。前半は色彩豊かにして、後半、死の気配が漂ってくるところは細密描写に」「音楽も19世紀の古楽器のみを使って、19世紀のバルザックがいた時代にある楽器だけで作りました」とこだわりを語った。

『ざくろ屋敷』に声で出演したひらたは「押しの強い新人がたくさんいる演劇界の中で、深田君は個性的でいい人だった。道徳観、倫理観もしっかりしていて、ちゃんとした作品を作ってくれそうだと思ったので『ざくろ屋敷』のオーディションを受けました。深田君という人物に鼻を利かせてみました」と青年団の活動の中で知り合った深田監督の当時の印象を振り返った。

『move 2020』主演の兵頭は、「コロナ自粛が始まった頃、舞台の仕事が上半期全てなくなって、表現することが止まってしまったと思いました。リモートで映画を作ろうという流れで作られたものは、明るい作品が多かったですが、深田監督に「この状況を受け止め、見つめているという作品を作りたい」と言われたのでぜひやりたかった。深田監督から指示の演出ノートが送られてきて、助監督もメイクもカメラマンも私。カットも自分でかけました」と出演の経緯と、自室で撮影したリモートでの映画製作過程について明かす。

深田監督は「私は映画を作る時に、100人が見るときには100通りの見方ができるように撮っています。コロナ禍で価値観の転換よりも、崩壊が起きてしまった人もいると思う。ただその悲しみを見つめることができないかと思った」とテーマを語った。

第33回東京国際映画祭は11月9日まで開催。
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