2020.11.05 [イベントレポート]
写真を通して死とどう向き合うか…… 小山駿助の初長編監督作『初仕事』上映
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登壇した小山駿助

俳優・小山駿助の初長編監督作となった『初仕事』が11月4日、第33回東京国際映画祭の「TOKYOプレミア2020」で上映された。上映後のティーチインには、小山監督が東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズの舞台に登壇し、今作の製作のきっかけや会場からの質問に答えた。

我が子の遺体を写真として残したいという依頼を受けて初仕事に挑むカメラマン・山下と、依頼主である安斎の、腹を括り切れない男ふたりの話。今作で、我が子のことを忘れないために遺体の写真撮影を依頼するという難役どころに挑んだ小山監督。人の死を写真に収めるというテーマはどこから生まれたのかについて、「図書館で働いていたときに読んだ本の中に、写真が発明された時期からヨーロッパでは実際に亡くなった人を写真に撮っていたことがあると書かれていた。初めは『気持ち悪い』と感じたが、亡くなった人を完全に忘れないために写真を撮るという意味では理解できる部分があった。相反するふたつの感情を描きたいと思い、映画にした」と明かした。

観客からは、自身が大切な人との最期の別れでどう振舞ったのか述懐しながらの質問が相次いだが、小山監督は「亡くなった人を忘れないために写真を撮ることも選択肢のひとつだと思うが、撮らないことを選択しても良いと思う。人の死とどう向き合うのかを問うた作品なので、命にかかわる仕事をしている人や、今を一生懸命生きている人には心に刺さる映画になっている」と答えた。

俳優たちの芝居の演出や各シーンのカメラワークに関して質問が及ぶと「これまでも大好きな映画監督の技術を応用しながら自主製作で映画を作ってきたので、それが自分のこだわりとして自然と出ているのではないか。そうしたところに気づいていただけて嬉しい」と笑顔をのぞかせた。

第33回東京国際映画祭は11月9日まで開催。
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