2020.11.08 [インタビュー]
閉鎖的な伯母と開放を望む甥。出会ったふたりの行く末は!?『最後の入浴』公式インタビュー:デイヴィッド・ボヌヴィル(監督/脚本)

東京国際映画祭公式インタビュー 2020年11月4日
最後の入浴
デイヴィッド・ボヌヴィル(監督/脚本)
最後の入浴

©2020 TIFF

 
ポルトガル北部にある過疎の村。世間から隠れるように禁欲的な生活を送ってきた40歳の修道女ジョゼフィナは、母に捨てられた15歳の甥と暮らすことに…。やむなく始まった共同生活の中で生み出される葛藤と、傷ついた魂の触れ合いを浮き彫りにしていく繊細な心理ドラマ。本作が長編初監督となるデイヴィッド・ボヌヴィル監督に製作のプロセスなどを伺った。
 
――プログラムの作品解説によると「過疎高齢化が進んだ村で奇跡的に赤ちゃんが誕生したニュース映像から本作を着想した」とありますが?
デイヴィッド・ボヌヴィル監督(以下、ボヌヴィル監督):あくまでも希望に満ちたニュースにインスパイアされたということです。ことの起こりは2009年、私がロンドンにいた時です。博士号を取得した後だったのですが、独りぼっちでとてもメランコリックな気持ちなっていました。そして、そんな自分の“孤独”を表現したいと模索していた時に、ふと故郷ポルトガルの過疎の村で、赤ちゃんが生まれたニュースを思い出したのです。
どんどん老いてく村に生まれた新しい命=赤ちゃんに、とても魅力を感じました。同時に、その赤ちゃんと、もうひとり加えたいなと思って孤独な修道女を思いついたのです。
 
――ポルトガル北部、ドウロ渓谷の透明感に溢れた絶景と、そこで繰り広げられる閉鎖的な人間模様のコントラストが効果的です。
ボヌヴィル監督:ドウロ渓谷に住んだことはないのですが、昔からよく知っている場所。風光明媚ではありますが、孤立感、孤独感をとても感じさせる場所です。棚田を作ったり、木々を植えたりして、作物を作っている小さなコミュニティが点在していますが、街に行くには長い時間がかかります。
伯母と甥が住んでいる家も、渓谷に建つ一軒家。そういう人と接する機会のない場所が、この物語にとっては完璧なロケーションだと思いました。
 
――それでも、アンシャンドルは友達と車に乗って街に遊びに行きます。その若いエネルギーに触れた伯母ジョゼフィナの心の揺れが息苦しいほど伝わります。
ボヌヴィル監督:私が描きたかったのは、同じ環境の中にいる対照的な人物です。伯母のジョゼフィナはあえてこの村を去り、修道院に入り、人間関係を断ち切るような生活を送っていました。甥を放っておけずに村に帰ってはきましたが、心の中ではまた戻ろうとしている。
反対に甥のアルシャンドルはいろんな経験をして、人と会い、人生を青春を謳歌したいと思っています。閉鎖的な伯母と解放を望む甥。対極的なふたりがこの孤立した村で出会ったらどうなるか? このあたりがすごく面白いと思いました。
 
――“入浴”は、ふたりの心が通じ合うための大切な儀式あるいはプロセスですか?
ボヌヴィル監督:そうかもしれません。ジョゼフィナは日常生活から飛び出して、日頃はしないようなことをすることによって、ひとつの境地に達します。アルシャンドルも、丁寧に身体を洗ってくれるこの女性は実母ではなく伯母なのだということに気がつきます。そして、ふたりが違った境地にたどり着き、お互いを認め合う。お互いが、お互いを必要としていることを確認するのです。
 
――アルシャンドルを演じたマルティン・カナヴァロくんは裸体も美しいし、繊細な演技もうまい。演技初体験とは思えませんが?
ボヌヴィル監督:彼と出会えたことは、実にラッキーでした。本作を撮影したのは、2018年の夏ですが、マルティンは撮影2日目に14歳になったばかりでした。なにしろこの役は全裸のシーンもあるので、彼自身の許可はもちろんですが、ご両親の許可が不可欠です。でも、お母さんがとても寛容な方で本当に良かったです。
演技については、撮影前にワークショップを開いて、伯母を演じたアナベラ・モレイラさんと一緒に過ごしてもらいました。ふたりは本当に良いチームで、様々ないアイデアを出してくれました。
 
――ジョゼフィナを演じたアネベラ・モレイラさんと、妹アンジェラを演じたマルガリータ・モレイラさんは、本当の双子の姉妹。偶然のキャスティングあるいは“双子の表裏一体”を意図して双子に拘ったのですか?
ボヌヴィル監督:特に双子の女優さんに拘ってはいませんでしたが、この役柄は同じような生い立ちを歩んでいながら、全く違う悩みを抱えている姉妹。妹は男と逃げて、姉は修道院に入る。その両極端な道を選んだのが双子の姉妹というのも、面白いと思いました。正直、後付けですが(笑)。
今回、おふたりに同時に出演依頼をして、両方の役を試験的に演じていただきました。その結果、妹のアンジェラは自由奔放でグラマスな体型が良いと思ったので、マルガリータさんをキャスティング。アナベラさんはすごく役に入り込むタイプの女優さんなので、シリアスなジョゼフィナを演じるにはぴったりだと判断したのです。
 
――長編第1作である本作をTIFFに出品していただき、世界の注目を集めていますが、今後の第2作の構想などは?
ボヌヴィル監督:TIFFのワールド・プレミアで上映してくださって、大変嬉しく思っています。私は、以前からフランスのマノエル・オリヴェラ監督と一緒に仕事をして学びたいと思っていたので、その夢が叶って満足です。そして、今では監督デビューも果たせました。
現在は、2作品が進行中です。ひとつはナラティブで、言葉で語る物語性の高い作品。もうひとつは実験的なアート作品。両極端の2作です。とはいえ、ポルトガルで『最後の入浴』を仕上げている最中にコロナ禍が始まってしまい、いまだにロンドンに戻ることができないのです。なので、いまのところポルトガルでおとなしく新作の準備をして、状況が良くなったらロンドンに戻り、製作を進行するつもり。早く自由に動きたいです。
 
 

インタビュー/構成:金子裕子(日本映画ペンクラブ)
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