2020.11.07 [イベントレポート]
筒井真理子「3週間食べ続けて太った」 深田晃司監督の出世作『淵に立つ』上映
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同映画祭では4年ぶりの上映となった

第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した深田晃司監督の『淵に立つ』が11月7日、第33回東京国際映画祭が開催中の東京・六本木のTOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、深田監督、出演の筒井真理子がQ&Aに登壇した。

特集上映「Japan Now 気鋭の表現者 深田晃司」の1本で、16年の東京国際映画祭でも上映された。深田監督と筒井も「4年前に同じJapan Nowで上映していただいたので、デジャブ感がありますね」と2度目の上映に喜び。

郊外で小さな金属加工工場を営む一家(古舘寛治、筒井)が、前科のある男(浅野忠信)を雇い入れたことから翻弄されてしまうというストーリー。映画は、娘の身に起こった事件をきっかけに、一家の関係性が変わってしまう。

事件後の後半の撮影は約3週間のインターバルがあったそうで、筒井は「太ることにしました」と明かし、「実際に高次生脳障害を負った娘さんのお母さんに取材させてもらった。心ないことだけは言わないように心がけていたのですが、「前はいろんな方が来てくださったのに、今はね……」とおっしゃったので、「そうですよね」と言ってしまったら、目の奥が違って見えた。娘さんが就職し、結婚する姿を見たかったと思います。この母の思いには太刀打ちできないと思いました」とその理由を話した。

体重の増量で時間の重みや家族の変化を表現した筒井に、深田監督は「脚本上は8年後、というテロップが入っていました。でも、撮影が終わって、章江(筒井)の変化を見たら、テロップは必要ないと思った。物語上の大仕掛けの部分だったが、俳優の演技だけで見せ切れたのは監督としてうれしかった」とその名演を称えた。

後半部分は一気に人間ドラマが深まり、スリリングな展開。明確な答えのないラストシーンについて、深田監督は「題名には、お客さんと一緒に淵に立てるような作品になれば、との思いを込めました。世界は不確かな、怖いものです。ラストの意味について、よく聞かれますが、いつも、「ハッピーか、アンハッピーになるかは(古舘演じる)お父さんの頑張り次第」と言っています」と話していた。

第33回東京国際映画祭は11月9日まで、六本木ヒルズ、東京ミッドタウン日比谷ほかで開催される。
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