11/1(日)TOKYOプレミア2020部門『君は永遠にそいつらより若い』上映後、吉野竜平監督、佐久間由衣さん(女優)をお迎えし、Q&Aが行われました。
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司会・矢田部吉彦シニア・プログラマー(以下、矢田部SP):みなさまいかがでしたでしょうか。監督、ワールドプレミア上映後の今のご気分をお聞かせください。
吉野竜平監督(以下、監督):本当にありがとうございました。僕はちょっと観られなかったんですが、関係者に上映中の様子を聞いたら、笑い声が起きていたって聞いたので、すごくうれしいです。
矢田部SP:ありがとうございます。佐久間さん、上映後にこうやってQ&Aでお客様のご質問に答える機会はなかなかなかったかもしれませんが、今の心境を聞かせてください。
佐久間由衣さん(以下、佐久間さん):とても光栄だなと思っています。何より作品が完成したのだなということを実感しておりますし、実際に生で皆さんとコミュニケーションが取れるということは最近なかったので、余計にうれしいです。
矢田部SP:まずは監督に、『君は永遠にそいつらより若い』の原作となる小説があるわけですが、監督が最初にこれをお読みになった時の印象と映画にする時に世界観が近いとか感じられたのかどうか、そこからお伺いできますでしょうか。
監督:最初に読んだのはもう6、7年くらい前なんですが、原作には色んな要素が小説の中に込められていて、これを映画にするんだったらどの要素を特にピックアップしてやるのかっていうのが重要で、映画にするには大変そうだなというのは正直ありました。小説を読んで最初に感じたのは、原作の世界観というのが僕が今まで作りたかったものだと思いました。大きな声を上げない、全然大丈夫じゃないのに、大丈夫?と聞くと、うん大丈夫だよと言っちゃうような人たちの作品を、ぼくはずっとやりたいな、と思ってきたので、そんなテーマが原作小説に色濃く出ていたので、これは絶対にやりたい、という思いが湧きました。
矢田部SP:主人公にピッタリな赤毛が佐久間さんのアイデアだった、と聞いてびっくりしました。佐久間さん、赤毛にしようと思われた理由、そしてほかにもご自分のアイデアを役にどのように注ぎ込まれたかお伺いできますでしょうか。
佐久間さん:そうですね。私も原作を読ませていただいて、堀貝はどういう容姿をしているんだろうということを、監督とプロデューサーさんたちと何回も何回も意見の突き合わせをしました。普段は黒髪でいることが多いんですが、黒髪だと少し強く見えてしまうというか、意思がこもっているように見えてしまうと、なんかちょっと堀貝とは違うかなということを話したりしました。金髪だとイケイケな感じになってしまうということで、今回の映画で、赤という色が、実は裏のテーマカラーとなっていてるので、赤とはいえ、ビビッドではない、浅い色の髪の毛に挑戦してみようと思って、赤色をチョイスしました。
Q:原作から卒論のテーマがガラッと変わっていましたが、狙いはありましたか。
監督:原作小説ですと、堀貝の卒論のレポートのテーマは、中国の映画監督のチャン・イーモウとアン・リーのどちらと結婚したいですか、という内容を色んな人に訊いていくというやつだったんですね。映画って120分の中でキャラクターはこういう人ですよって説明しなければいけないので卒論テーマに関してもキャラクターが滲み出るような、内容に変えたいなというのもありまして、それで「将来のあなたにとっての成功ビジョンは?」に変えたんです。最初はチャン・イーモウとアン・リーのままでもいいかなと思ったんですが、結果、ああいうふうになりました。
矢田部SP:映画ネタを削除するのは苦渋の選択だったのかなと思いましたが。
監督:そうですね。僕もチャン・イーモウとアン・リーが大好きなので残したいなと思ったんですが、出版から経っている小説ですので、そこも変える必要があるかなと決断をしました。
Q:前作の『”隠れビッチ”やってました。』と今作の作品に向かう姿勢で違いはありましたでしょうか。
佐久間さん:実はこの映画は3年位前からお話をいただいていて、色々なことを乗り越えて無事に撮影することが出来きました。初主演作だった“隠れビッチ”の映画よりも早く話が来ていたと思います。私にとっては2作とも大切な作品です。違いについては、お話をいただき、原作を読んだときに、この作品は完全に文学だな、と思って、文学小説を映画化するのはすごく大変なんだなと思ったんですね。『“隠れビッチ”やってました。』の時は、感情を全力で出すという作業だったのですが、今回は自分の中で完結してしまう感情をいかにどういうふうに表現していくのかというのが難しくて、完成版を観て、反省しているところなんですが(笑)、何かそういった違いはすごく感じました。
Q:キャラクター設定について。
佐久間さん:そうですね、本当に大人になるというのは、なんというのかよくわからないんですけど、一つ一つ自分の感情に向き合いすぎると、前に進むのが大変になってくるということがすごく多いと思います。特に今そういうふうに感じている方が、コロナのこととかもあって、そんな風に感じている方がとても多いと思うんですけど、みんなが持っている感情で、自分のコンプレックスに目を背けたくなったりとか、トラウマとかあると思うんですけど、今回は何かを発散することがずっとできなくて、全部を、人間関係だったり、色んなことを受け止めていく・・・受けっていうんですかね、そういうことしかできなかったのでとっても難しかったですし、まだまだ未熟で、すごく勉強させてもらったなと思っています。何を言っているんですかね(笑)。監督と、作品に入る前にそういった点をすごくお話しさせていただいていたので、現場で細かいことを話すということはほとんどなく、自分も今までのことを今一度振り返って、掘り下げてお芝居するように努めていました。
矢田部SP:今のお話を聞いていると佐久間さんが全部背追い込んでしまったようにも聞こえてお気の毒に思うんですけれども、監督も当然、助けると言いますか、監督からはどのような、アドバイスをされたのでしょうか。
監督:佐久間さんはすごく真面目なので、とにかく考え込んでしまうんですよね。この役をやる上で、とにかくいい人をやらないようにしてくださいとお願いしました。すごく正義感に燃えていて、清廉潔白で、何も人が注意する部分が無いような人間ではなく、本当に普通の女子大生で、怠け者で、ズルもするし、卑怯なこともするかもしれないっていうような人、本当に欠点の方が多いようなキャラクターにしてくださいっていうようなことを堀貝(佐久間さん)に対しても、猪乃木役の奈緒ちゃんにも、いい人を演じようとしないでくださいと言いました。
Q:佐久間さんに高いところからのシーンがありましたが。
吉野監督:種明かしをしてしまうと、あのシーンは基本的にクレーンで佐久間さんを吊って、その紐とクレーンをCGで消してます。その時どんな感情だったかは佐久間さんがお話しください(笑)。
佐久間さん:そうですね、ロープがあるとはいえ、自分の体重で降りたんですけど、バンジージャンプが趣味だったので、高いところからは、むしろありがとうございますって感じでした。でもテンションが上がってるシーンとも違うと思ったので(笑)そこは頑張って抑えました(笑)。怪我はないように、当たり前ですけど、調子に乗らないようにしてました、はい、すみません(笑)。
Q:先ほどおっしゃっていた赤のカラーについて。
監督:赤がSOSのサインというのを裏テーマで決めてやっていこうと、出演者やスタッフ、美術のスタッフとも話して進めていました。堀貝の髪もものすごくどぎついSOSの真っ赤っかじゃなくて、なんか淡く、ちょっとこの人、今危ないんですよというような、あまり真っ赤じゃなくて、ちょっと色をくすませたというような感じですね。
矢田部SP:佐久間さん何か付け加えることはありますか?
佐久間さん:監督と同じです。
矢田部SP:ありがとうございます、それではそろそろお時間です。この映画『君は永遠にそいつらより若い』は2021年の公開を予定しております。感想などSNSなどで書いていただければと思います。最後にお2人から一言ずついただきたいと思います。
佐久間さん:本当にありがとうございました。かなり余韻が残る映画になっていると思いますが、みなさんに寄り添えるような映画になっていたらいいなと思います。私も、皆さんにSNSなどで拡散してもらえたら嬉しいです。公開は先ですが、私はそれまで、体のどこかにこの映画をぶら下げて日々を過ごしていきたいと思います。この作品を応援していただけたらと思います。ありがとうございました。
監督:本当にこういう時期にこの上映に来ていただいて本当にありがとうございます。大変な状況にいる方ももしかしたらこの中にいるかもしれないので、この映画ではすごく離れていてもすごく真剣にあなたのこと想っている人がいますよというようなことをメッセージとして伝えたつもりでいる映画です。もしすごく辛い人がいれば、ちょっとこの映画のことを思い出してくれて、少しでも気が楽になってくれたら嬉しいなと思っています。また2021年の公開の時に是非観にいっていただけたら嬉しいです。今日はありがとうございました。