2020.11.03 [イベントレポート]
是枝裕和監督が『台北暮色』監督と語る台北の風景、ホウ・シャオシェン
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是枝裕和監督
©2020 TIFF

第33回東京国際映画祭と国際交流基金アジアセンターによる共同トークイベント「「アジア交流ラウンジ」ホアン・シー ×是枝裕和」が11月2日に開催され、是枝裕和監督が都内会場で、台湾映画『台北暮色』のホアン・シー監督とオンラインで語り合った。

『台北暮色』はホウ・シャオシェンのアシスタントを務めていたホアン・シーのデビュー作で、台北の住宅地を舞台に都市で生活する人々の孤独が描かれる。2017年・第18回東京フィルメックスの「コンペティション」部門で『ジョニーは行方不明』のタイトルで上映されている。

本作が日本公開時に『台北暮色』と改題されたことについて是枝は「僕も経験がありますが、(海外公開時に)考案されたタイトルが、オリジナルより映画の本質を突くことが時折ある。この映画で探されるのは人だけではなく、台北の街と光。「暮色」という色を示す漢字が入っている日本のタイトルは、ホアン・シーさんが描きたかった映画に近いのでは」と問いかける。

ホアン・シーは「是枝さんの仰る通りです。私の第1作の長編で、作りながら何かを探し求めていました。すべてが不確定だということが映画に出ていたのだと思います。台北の街自体が探し求める対象、光と闇の交差するする色合いを作ってくれたのは撮影監督のヤオ・ホンイーさん。彼が強いインスピレーションを与えてくれて、私が描いたよりも素晴らしい台北の街をカメラを通して映してくれたと思います」と答えた。

父親が台北生まれであり、何度か現地を訪れているという是枝。「僕の父親は台北で生まれていて、戸籍の住所の場所に行くと、いまだにその地域に日本家屋が残っています。路地を一歩入ると道で将棋をしている人やお茶を飲んでいる人がいて、家と内と外の境が明確ではない場所がある。一方で中心部は大都市の雑多な魅力があって。僕にとって父親の生まれ故郷であるだけでなく、何か安心する場所」と街の魅力を語るとともに、『台北暮色』で「いろんな光が捉えられていると同時に、自転車や電車や車、生活音も含めて、遠くから聞こえてくる人形劇の音など遠近感の設定が見事だった」と映像以外での繊細な表現を褒め称えた。

また、台北市内で車がエンストを起こすシーンについての撮影に「許可を取ったんですか?」と直球の問いを投げかける場面も。「ゲリラ的に撮りました。プロデューサーから1回で、多くて2回で終えてくれと言われていましたが、あちこちで場所を変えて5回撮りました」「映画に盛り込まれているのは2回目のテイク。警察が来るからと、ヒステリックになっていた状態をOKカットにしました」とホアン・シーに明かすと、是枝は「絶対ワンテイクだと思ってました。東京では絶対無理。ちょっとうらやましく思いました」と笑いを誘った。

その後、是枝はホウ・シャオシェンからの影響について質問。ホアン・シーの父親がホウ・シャオシェンの同級生だったことから、幼いころから現場を訪れ、その後アシスタントとして作品に参加するようになったそうだ。

「若い頃にホウ・シャオシェンの現場を見て、みんなプレッシャーが大きいと思いました。ものすごく静かな現場なのです。「アクション」などほとんど言わずに、なんとなく撮影が始まるのです。あと、待ち時間がものすごく長い。若い私にはそれがなぜだかわかりませんでした」「でもホウ・シャオシェンをよく知るようになって、だんだんとわかってきて、現場でのやり方が自然に身についてきたと思いました。『台北暮色』を撮り終え、長い間ホウ・シャオシェンに影響を受けていたことに気づきました。自分の作品はこんなに文芸路線だったのかとショックを受けました(笑)」と述懐した。

そのエピソードを受け、是枝監督も90年代にホウ・シャオシェンのCM撮影を見学した際を回想し、「そのときもいつ始まったんだかわからないまま撮影が終わっていました」と納得の様子。さらに「その時一番撮影したのは、撮影現場ではなく、夜のカラオケ。歌がうまくて、撮れ撮れと言われましたね(笑)」と、作風から伝わる物静かな印象のホウ・シャオシェンの意外な一面を明かす。ホアン・シーも「ディスコやカラオケが大好きな方。『黒衣の刺客』のクランクアップの時に、日本語で“流し”と呼ばれるような、歌と伴奏をしてくれる人を連れてきて、一緒に歌ったりしていました」と振り返っていた。

トークシリーズ「アジア交流ラウンジ」は8日まで毎日ライブ配信される。Zoomビデオウェビナー(登録無料)で視聴可。第33回東京国際映画祭は、11月9日まで開催。
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