2020.11.01 [イベントレポート]
『再会の奈良』河瀬直美が来日叶わぬ監督のために報道陣を逆撮影
再会の奈良
河瀬直美監督(右)と國村隼

第33回東京国際映画祭の「なら国際映画祭2020」特別上映として、日中合作映画『再会の奈良』(ポンフェイ監督)が11月1日、東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで上映され、エグゼクティブプロデューサーの河瀬直美、出演の國村隼がティーチインに登壇した。

本作は、帰国後、数年間連絡が途絶えたままの残留邦人の養女・麗華を探すため、年老いた養母が中国から奈良県を訪れ、孫代わりのシャオザーと、偶然知り合った元警察官の一雄(國村)が加わっていくというストーリー。「なら国際映画祭2018」で観客賞を受賞した中国のポンフェイ監督が19年秋、奈良県御所市で撮影。日本からは永瀬正敏、秋山真一郎も出演している。

河瀬は「(来日できなかった)ポンフェイ監督、エグゼクティブプロデューサーのジャ・ジャンクーに代わって、お礼を申し上げます。感無量です。歴史的背景があり、日中の交流、友好を目指して作ったのは素晴らしいことです」と挨拶した。

本企画は「なら国際映画祭」発の映画プロジェクト作品。「奈良で生まれ育った私が奈良の良さを再発見しようと立ち上げました。映画祭でゴールデンシカ賞、観客賞を受賞した監督たちにシノプシスを出してもらって開発し、映画祭の翌年に撮影し、ポスプロは本国でやってもらい、日本とやりとりしながら完成していく流れ。(残留孤児は)センシティブな内容でためらう部分もあったと思うが、香港も中国も出資してくれた。歴史上の繊細なものを繋いでいこうとする姿勢には意義がある。通常なら、あり得ない座組みが出来上がった」と自信を見せた。

海外作品に多数出演するなど日本を代表する名優・國村は「私も初めて見ましたが、皆さんと見られて、よかった。ポンフェイ監督は温かい人柄で、映画にはそのまま人柄が出ている。撮影も映画の雰囲気そのままだった。「こういうショットが撮りたい」と言うので、やりやすかった」と振り返った。

また、河瀬は冒頭、自身の監督作『朝が来る』が米アカデミー賞国際映画部門の日本代表に選ばれたことにも触れ、「公開中なので、ぜひ見てください」とアピール。最後は、コロナ禍で来日が叶わなかったポンフェイ監督のために写真を届けたいと、取材メディアを逆撮影。「コロナ禍で作品が世界に届くまでに時間がかかっている。映画には明確な結末はないが、私たち自身が未来を作っていくものだと思う」と力を込めていた。

第33回東京国際映画祭は、11月9日まで六本木ヒルズ、東京ミッドタウン日比谷ほかで開催される。
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