2020.10.20 [更新/お知らせ]
“TIFFの申し子”深田監督が映画祭に込めた想いとは?「Japan Now部門」特集 気鋭の表現者 深田晃司 日本外国特派員協会 記者会見レポート

毎年、日本映画の今を俯瞰する目的で多くの名監督の作品を特集してきた「Japan Now部門」。本年特集するのは、2016年に『淵に立つ』でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査委員賞を受賞し、本年度も新作『本気のしるし』がカンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション2020に選出されるなど、いまや日本の映画界を索引する映画監督となった深田晃司監督。2010年に監督した『歓待』が東京国際映画祭の「日本映画・ある視点」部門作品賞を受賞し、TIFFで才能を見出されたといっても過言ではない深田監督の初期作品から最新作までが一挙に公開となる貴重なプログラムとなっております。
 
東京国際映画祭での上映に先駆け、日本外国特派員協会(FCCJ)にて記者会見を行いました。
 
FCCJ

©2020 TIFF

《イベント概要》
◆開催日時:10月19日(月) 17時~
◆会場:公益社団法人 日本外国特派員協会(FCCJ)
◆出席者:安藤裕康(東京国際映画祭チェアマン)、安藤紘平(第33回東京国際映画祭 作品選定コミッティメンバー)
◆登壇者:深田晃司監督(「Japan Now」部門特集)
 


 
【深田晃司監督 コメント】
FCCJ
今回特集として選ばれたことは、本当に光栄に思っていて、映画祭の英断に感謝です。10年前に東京国際映画祭の「日本映画・ある視点部門」で作品賞をいただきました。それが大きな後押しとなり、数々の国際映画祭に呼んでもらうこととなり、日本だけではなく世界中の方々に映画を見てもらうことができました。あれからちょうど10年後という節目に特集として選んでいただけたことで、「これから先また10年間頑張れ!」と励ましをいただいたように感じています。
 
【安藤裕康 東京国際映画祭チェアマン コメント】
FCCJ
映画祭のフィジカルな開催についてはとても悩みましたが、観客の皆様に足を運んでいただいて、映画を観る喜びを再認識していただきたい、という思いで実施に至りました。コロナ禍を克服する決意を新たに、感染対策は万全にしています。最も残念だったのは、外国の方の訪日が難しくなったこと。従来実施していたコンペもできなくなってしまいましたが、今年は世界の映画祭との連携を深めたいと考えています。カンヌ、ベネチア、ベルリン国際映画祭で上映された作品をたくさん上映しますし、オープニングセレモニーでは世界の映画人から動画でメッセージをいただく予定です。
 
【安藤絋平 作品選定コミッティメンバー コメント】
FCCJ
「映画は過去の歴史を変える力はないけれど、未来を変える力がある」とおっしゃったのは、昨年の「Japan Now部門」で特集をさせていただいた大林宣彦監督でした。日本の今を語り、人というものを深く見つめながら、社会の不条理を解いていく、そういう深田監督は、人と社会の関係性というものを、スクリーンと観客の関係性で描く、きわめてまれな映画作家。コロナで混沌とする今日ですが、気鋭の表現者深田晃司が、どんな未来を語ってくれるか、どんなフィロソフィーをみせてくれるか、「Japan Now」部門の見どころですのでご期待ください。
 
 
【深田監督へのマスコミからの質疑応答】
Q:先ほど「映画祭の英断に感謝いたします」おっしゃっていましたが、なぜ「英断」という言葉を選んだのか。
 
A:私は映画監督としては年齢的にもキャリア的にもまだまだ大きな実績を残していないと感じていますし、ヒット作も出していません。映画祭には多くの役割がありますが、その中の一つに、評価の定まっていない人にスポットを当てるという大事な役割があります。商業映画とは違った基準で、新たな才能に光を当てることも大切です。そういった意味で今回の選定は社会的な、そして公的な役割を果たしているのではないかと思い、英断という言葉を使いました。
 
(安藤チェアマンから補足)深田監督は国際的に精力的に活動され、素晴らしい作品をたくさん作られているのももちろんですが、今年はコロナで日本映画界が厳しい状況にある中で、困窮する映画業界を救おうと「ミニシアター・エイド基金」を設立し、先頭になって動いてくださいました。また今年の5月、6月にかけて世界の21の国が集まったオンライン映画祭「We Are One:A Global Film Festival」にTIFFが参加した際にも、深田監督が短編を出してくださった。今年の情勢も考えて、今年の映画界を代表する監督として、深田監督にぜひお越しいただきたいと思いました。
FCCJ
 
Q:現在は映画を見に行くのも作るのも難しい時期だが、今後の映画製作現場はどのように変わっていくのか。
 
A:コロナウイルスによって社会の状況は大きく変わりましたが、映画の現場ではそこまで大きく変わることはありません。俳優とスタッフの安全を守りながら、という意識は以前と同じですし、そこに1点“コロナウイルス感染対策”というものが増えただけというようにシンプルに考えています。むしろ、考えなくてはいけないのは、コロナ以前にも映画の安全は保たれていたのかということ。安全を重視して撮影する日数が十分にあるのかどうか、もし足りなければ日数を増やさなくてはいけないけれど、それに伴う予算はあるのかどうか。日本映画の低予算化という問題は進んでいて、助成金の少なさは安全対策にも影響してきています。しっかりコロナ対策をするとなると、負担もお金も労働力もさらに必要になるので、きちんと業界内で支え合える仕組みを作っていかなくてはいけないし、公的にもサポートを訴えていかなければいけないと考えています。

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